「緊急事態宣言」後day6。
いまやっている本の初校が届いた。
くわえて、いくつかうれしい便りがあった。
ひとつは旭川の友人からクリスマスギフト。
準備していたけれど、送る暇がなかったのだという。
ホットチョコレートとメッセージカードに同封されていたのは、
私の育った九州の団地を、すぐ隣の丘から臨んでいる小さな絵だった。
以前送った写真を見て描いてくれた水彩画だった。
裏には、私がその場所について英語で書いた回想録の一節が書き写してあった。
絵は魔法であると思う。写真よりも当時のことを思い出す。
もうひとつ、お年賀に、やはり去年の旭川で録音したピアノの音源を知人に送ったのだが、
その知人が、聴いた感想というか、レビューを書いてくれた(「本物の『はじめて』」と)。
とてもうれしかった。
初めて滞在する土地で、でも案内して連れ回してくれる兄や姉のような友人がいて、
技術ゼロで音楽を演奏する子供になったあの多幸感がちょっとでも伝わっていた気がした。
そう、私は生まれながらにして南国の長男だったけれど、それはそれとして、二十代最後の九月は、
旭川の古い友人や新しく知り合った人たちがいたおかげで、北国の弟のように過ごした人生の一幕なのだった。
それも年の離れたきょうだいで、だから姉も兄も弟に張り合うことはなく、車の運転を知っていて、
通りの名前も知っていて、北の季節の機微も知っていて、連れ回して案内してくれた、ということだった。