· 

踏破 2021/03/28


雨。

 

昨日の夜はほとんど眠れず、かなり辛かった。悲観的な気持ちになり、いろいろいやなニュースやそれへの手酷いコメントを読んだりして。

夜が明けて日曜になっても、世間(SNSの声と知り合いの声がまざったもの)の不安を浴びているような気持ちで自分ことも責めていたが、そんなときになんとなくヴェルナー・ヘルツォークの『氷上旅日記』(藤川芳朗訳、白水社)を手に取った。4年前の同じ月に京都の「ヒト族レコード」で見つけて買っていたのだ。ぱらぱらとめくって、いま必要な本を手に取ったとわかった。1974年の冬にミュンヘンを発ち、徒歩で危篤のロッテ・アイスナーのいるパリをめざすヘルツォークは、自分の歩みがアイスナーをたすけると信じている。しかし、携帯などはもちろんないから、彼はときには思う、「まったく無意味なことをしている、という感じがする。アイスナーはまだ生きているのだろうか」(p.91)。そんなおぼつかなさを抱えながら、20日間、飛行機でも列車でもなく、徒歩で歩き続ける。この、心細さとともにある、という力に感銘を受けた。

 

友人に郵便を送った。別の友人と電話した。