· 

『ジョナス・メカスーーノート、対話、映画』についてのノート 2020/05/19


訳者が、30年来にわたる著者との交流の過程で著者から送られてきた「手紙やファックス、雑誌、写真集、映画の説明など」を、「メカスさんの旅行中に出会い、親しくなった人々に読んでもらおうと思い訳したもの」が纏められた著述集。手紙・雑記・各所に寄せた短文と、対談、そして代表的な映画作品にそれぞれ1、2ページの短い解説を付したリストの三部構成になっている。100ページを越える付録には、いくつかの映画のコメンタリー。小文を収めた第一部を締めくくるのは「第四回恵比寿映像祭」のカタログに寄せられた、東日本大震災に言及する文章。対話集は、自伝と、撮影と編集の技法をあかしている。日本語圏独自の編集という意味では『メカスの友人日記』の続編のようでもある、とくに第一部はきわめて局所的な、だからこそ親密な打ち明け話のトーンがあり、しかし、第二部は、著者や著者に近しい対話相手が彼のことをどう見ているかが垣間見える、入り口にもなっている。閉じられたサークルのなかで手渡された言葉たちと言って言えなくはない、でもある対談のなかではメカスはこうもいう、「この雑誌を読むような人は、わたしたちの名前さえ知らないということを、忘れないように」(「スタン・ブラッケージとの対話」より)。映画のリストは鑑賞の手引きに。A5版で300ページ強の書物だが、ソフトカバーと軽量の紙、横書き右開きの余裕を持った組みが、軽さを感じさせる。図版多数。いくつかの、タイプライターで打ち出された手紙の画像に呼応して、本文内の英文とアラビア数字はタイプライターのフォントをつかっている、印刷されたページにも、手紙の親密さが伝わるように。