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夢に尋ねた一日 2021/02/28


昨日は結局夕方から、前夜に夢に見た古書店に行った。

一度だけお会いしたことがあるがそれだけだったご店主に自己紹介する。

知り合いだったから夢の中でも知り合いとしてあらわれた、のではなく、

夢の中で知り合いとしてあらわれたから、現世で知り合いになる、という順序。

 

そうやって夢の風景をこちらに招き入れる。夢をお告げや前触れとしてとらえたことはいままでほとんどないように思えるのだが(夢のなかでは靴をなくしたが、それらしいエピソードはなかった)、現実の反映というだけでなく、夢が現実を照らすことはあると思っているふしがある。

 

そのすこし遠めの古本屋に向かいながら思ったのだが、

夢のなかでその店は現実にはない鎌倉の山の上にあって、そういう意味では、

古書店ではなく、鎌倉の山に行くという選択肢もあったわけだ。

北鎌倉駅で降りて…それはまたにしよう。春の海もいいものだから。

 

その帰り、店からほど遠くない場所で知人がやっているレストランに顔を出すが、満席。

あらためて予約して来ます、と言って帰る。時短営業で大変だと思うけれど、お客さんがいてよかった。

最初戸口に立っても気づかれなくて、そうしたらカウンターにいたお客さんが手で「来てるよ」と伝えてくれた。

その手の動きは、白人の方だったが、指だけでなく上半身全体をゆるく動かす流れの中にあり、親しみを感じた。

「昼に太郎さんとそっくりな方が来て、あ、太郎さんだと一瞬、思ったのよ」といわれる。

 

店では、池澤夏樹『シネ・シティー鳥瞰図』と手塚治虫『三つ目がとおる4』を買った。

『三つ目がとおる』の文庫の4巻目は怪植物ボルボック編で、むかしうちにはA4版のペーパーバックがあった。

寝る前に読んだ。やはり面白い。いま読むと、人類と植物の相剋ーーというか、人が植物と相対する状況を作り出すことーーを描くストーリーや、もっと単純に、大地震がおこるときの描写にふるえる。そして写楽のかっこよさである。『バンパイア』のロックや『三つ目がとおる』の写楽保介は、ダークヒーローというものとのはじめての出会いだった気がする。

 

『シネ・シティー鳥瞰図』の解説で青山南が引用している池澤夏樹の文章ーー「優雅というのはヒラヒラしたドレスで気取って歩くことではなく、人生は苦悩と奮励努力の連続だというような浅薄にゆがんだ人世論のたぐいに耳を貸さないという態度にほかならない。」

 

夢に尋ねる。今朝の夢は、ちょっと疎遠気味の友人から便りがあって、

場面が変わって、最近知り合った人から文章を依頼された。

依頼されるのは無理だから、疎遠気味の友人に連絡してみようかと思う。