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ヴィック・チェスナット 2021/12/23


晴れ。

 

歯が抜ける悪夢を見て起きる。夢でよかった。歯が抜ける夢は吉兆と言われることもあるそうだけど、

それは疲労と明白な相関関係がある、と思っているので、いいことだとしてもさすがに素直に受け取れない。

 

今年描いた唯一の絵はジョージア州アセンズ出身のシンガーソングライター、

Vic Chesnuttのポートレートだった。チェスナットの音楽に出会って、

チェスナットの友人クリスティン・ハーシュが彼について書いた回想録

Don't Suck, Don't Die』を読んでからというもの、クリスマスはそのまま

チェスナットの命日だということを思うようになった。

 

まわりのだれもチェスナットの音楽を知らないので、

彼の音楽への気持ちを分かち合ったこともほとんどない。

直接だれかに「ヴィック・チェスナットが好きなんです」と話したのは一度だけ、

2017年の春先に伯父に誘われて巣鴨の飲み屋さんというかスナックで催された

中川五郎さんのライブにいったときで、終演後に中川さんと少し話すことができて、

そのときにチェスナットの名前を出した。というのも、中川さんが彼について書いている

エッセイを読んだことがあって、それが好きだったからだ。

 

その日、中川さんは最後にディランの「Blowin' in the Wind」をやったが、そのエレアコは

ファズかディストーションかわからないがとにかく歪んでザリザリした音を出すエフェクターに繋がっていて、

それまでほぼアコースティックな音だったのだがクライマックスは電気的ノイズ全開のリフを弾いてしめくくっていた。

ぼくはそれを聴いていて、後追いだがすごく好きになって芸術への姿勢を学びもした、

ジョージア州アセンズのインディーレーベルを中心にした90年代のバンドたちの、

曲はフォークっぽいが音は歪んだりガチャガチャしたりする音楽を思い出した。

Neutral Milk HotelとかThe Apples in Stereoとか、そういうバンドで、

たぶん、その先にはBright Eyesとかがいて、さらにつづいている。

ヴィック・チェスナットは、そういうミュージシャンたちと同世代で、

彼らにいろんな影響を与えた音楽家なのだ。たぶん。

 

好きな曲はたくさんあって最初はこれを、とはなかなか言えない。

でもやはりローリング・ストーンズの「Ruby Tuesday」のカバーだろうか。

もとの曲と比べたらその特徴がよくわかると思う。